ファクタリング

ファクタリングのデメリットと注意点

キャシュフローの改善や、突然の設備投資費に非常に役に立つファクタリングですが、デメリットはないのでしょうか。ファクタリングを初めて利用するという人だけでなく、何回か使ったことのある人ももう一度おさらいしてみましょう。

売上債権を100%現金化できない

入ってくるお金の総額は少なくなる

ファクタリングは売上債権を早期に現金化する手法ですが、売上債権の金額を100%現金化できるわけではありません。

ファクタリングを行うためにはファクタリング会社に手数料を支払う必要があります。この手数料は、2社間ファクタリングではだいたい20%、3社間ファクタリングでは5%前後と相場が決まっています。

この手数料ですが、ファクタリング会社が行う作業の代金も含まれます。売上債権の現金化には契約書の印紙代や登記費用が必要になります。特に債権譲渡登記及び抹消登記における最低限の費用は10~15万円です。

契約書の印紙代は契約書に書かれている金額によって変動するため、最低でもファクタリング会社は20~30万円の手数料がなければ、実費の部分で赤字になってしまいます。

また、ファクタリングでは売上債権先の企業が資金ショートしてしまった場合、ファクタリングを申し込んだ企業からファクタリング会社は資金を回収することが出来ません。

このリスク管理としても手数料は絶対必要なのです。こうした理由から、例えば300万円の売上債権をファクタリングしたい場合、手数料として実費で30万円程度、リスク管理として30万円前後といった手数料がかかってしまうのは仕方ないといえるでしょう。

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3社間ファクタリングの場合、取引先に承諾を得ないといけない

3社間ファクタリングは売上債権を割り引いてでもキャッシュがすぐに必要であるということになります。そのため、取引先に知られてしまうと資金繰りが苦しいのではないか経営に無理があるのではないかと不安にさせてしまう可能性があるのです。

2社間ファクタリングの場合、大きく報道されるわけではないので、ファクタリングを行ったという情報が相手に伝わることはほとんどないと思われますが、それでもひとつの売上債権を複数の企業と取引できないように債権譲渡登記を行うことが一般的でしょう。

この登記は、当然調べれば誰でも閲覧することが出来ます。そういった意味で、ファクタリングを行ったという情報を完全に遮断することは極めて難しいのです。

こうした理由から、下請け企業が親企業の売上債権をファクタリングすることに抵抗のある経営者も多いのではないでしょうか。特に、親企業との取引が自社の売り上げの3割以上を占めているといった場合には、なかなか手が出せないでしょう。

こうした状況は容易に想像できるため、公正取引委員会は下請け企業と親企業の間のファクタリングが行われた結果、その後の取引関係の悪化に関して基本的にやってはいけないという正式な通達を行っています。

つまり、ファクタリングを行ったからといって、支払い条件を変えたり契約条件を不当なものとしたりすることを禁止しているのです。また、その後の継続的な契約についても不利益となるような行動をとることを禁止しています。

公正取引委員会はファクタリングについては前向きに評価しているといえるでしょう。

 ファクタリング関係の詐欺が増えている

ファクタリングは法律に則った正当な取引です。しかし、ファクタリングを行うということは早急に資金が必要な場合が多く、心理的には追い詰められている状況といえるでしょう。

この心理状況に付け込んで、変な契約を結ぼうとする悪質なファクタリングの被害が後を絶ちません。

ファクタリングは、特段お金の貸し借りなどが発生するわけではない普通の売買契約と変わらないものです。ぜひ、注意していきましょう。

ファクタリングでよく起こる詐欺の手法と防止方法

それでは悪質なファクタリングを行う業者がよく使う手口を押さえておきましょう。この手口を理解しておくことで、詐欺の被害から身を守ることが出来ます。

必要以外の契約はないか

ファクタリングを行う際に必要となる契約は主に2つです。ひとつが債権譲渡契約。この契約を結ぶことによって、売上債権をファクタリング会社に譲渡し、自社がいくら受け取るかを決めることが出来ます。続いて債権譲渡登記代行契約です。

契約以外の契約書には注意

ファクタリングに利用している売上債権を、他のファクタリング会社とも契約しないようにするための登記をファクタリング会社にお願いする契約といえます。

また、今の売上債権がすでに他の会社に売り渡されていないかを確認するための登記でもあるため、ファクタリングが社としてもこの契約がないと不安です。

お互いのためにぜひ結んでおきましょう。他にあり得る契約としては3社間ファクタリングを行う際に、ファクタリング会社が売掛金を集金することを定めた集金委託契約が挙げられます。これら以外の契約書が出てきた場合は必ずその意図の説明を受けたほうが良いでしょう。

保証人や担保を求められていないか

ファクタリングは売上債権の権利を売買する取引です。貸金業などでは一切なく、実際そういった業許可は必要ありません。

そのため、ファクタリング会社から保証人や担保を求められた場合は速やかにその契約を中断して、自社の顧問弁護士などと相談したほうが良いでしょう。お金を返すわけでもないのにどうして保証人などが必要となるのでしょうか。

またどさくさに紛れて株式の譲渡などを迫ってくる場合もあります。こうした場合は速やかに契約を打ち切ってください。

手数料がありえないほど安い

ファクタリングを打診する際には電話やメールなどを最初に使い、ファクタリング会社の返信を待つことになるでしょう。このときにファクタリング会社は必ず大枠を説明するはずです。

その後、その説明に納得したら実際の契約へと進みます。このとき、実際の契約と電話越しでの説明に違いが出てくることがあります。また、手数料が5%・10%など2社間ファクタリングとしてはあり得ないぐらい低いこともありえます。

こうした契約では、手数料以外によくわからない項目があったり、何か別枠で実費などを請求される場合があるのです。こうした契約は多くの場合、あまりよくない契約です。

ぜひ自社の税理士などと相談してください。

担当者が会おうとしない

ファクタリングは確かに郵送だけでも十分に契約が出来る仕組みです。しかし、こちらが望んでいるにもかかわらず、かたくなに郵送だけで契約を済まそうとする業者があります。

また、こちらが来社意思を告げると、近くの喫茶店でといったやり取りをしてくる業者もあるのです。

こうした業者は、本社にこちらを入れたくない会いたくないといった心理が強いのでしょう。ぜひ注意してください。

ファクタリングという大事なお金のやり取りをする際に、全く顔の知らない関係で取引を行うことがありえるでしょうか。

ファクタリングデメリットまとめ

ファクタリングは早急にキャッシュが必要となった場合の強い味方であることは間違いありません。しかし、デメリットもあることも明らかです。

特に悪質なファクタリング契約には十分注意してください。お金がないという感覚は経営者としては非常につらいもの。

そうした心理状況はいつもと同じで平静であるということはなかなか難しいはずです。いつも以上に慎重に契約書を読んでいきましょう。