最近では、サラリーマンから個人事業主として働く人が増えてきました。個人事業主やフリーランスでもファクタリングは利用できるのでしょうか。答えは端的に言ってしまうと可能です。ただし、注意が必要であるといえるでしょう。どんな注意が必要なのか詳しく見ていきます。
個人事業主とファクタリング
ファクタリングは売上債権を期間よりも前に割り引いて現金化する手法といえます。その割引率については手数料という形で、多くの場合15~30%程度の割合で発生します。(2社間ファクタリングの場合)ファクタリングでは、審査がありますが銀行融資とは異なり自社の売上や借入金の支払い状況、あるいは債務状況などはあまり関係がありません。
大事なことは売上債権そのものの性格です。売上債権の性格とは、例えばその企業規模であったり、今まで長期的な付き合いで結ばれていた契約による売上債権なのかあるいはスポットや季節変動によって生まれた契約なのかなどの違いを指します。
そのため、銀行融資が断られた場合でも十分に資金調達手段として利用することが出来るのです。また、売上債権が重要なので、個人事業主であるのか株式会社であるのかという点も特に問題になりません。
ただし、個人事業主が抱える大きな問題が2点あります。確認していきましょう。
個人事業主で気を付けなければならないこと
1-1取引規模が小さい

ファクタリングで利用するであろう売上債権の多くは、100万円・200万円といったある程度まとまった売上債権となります。
そのため、50万円以下の小さな売上債権はファクタリングの対象に非常にしにくいのです。正確に言うと決してできないわけではないのですが、手数料がかかってしまうために、ファクタリングの旨味が消えてしまいます。
ファクタリングを行う上での手数料は、契約に関する印紙代や債権譲渡登記のための登記代などの事務に係る実費だけで20万円近くかかってしまうのです。こうしてみると、例えば50万円の売上債権をファクタリングすることになる場合、最低でも20万円の手数料、つまり40%が消えてしまいまいます。
これでは、良い資金調達手段ということはできないでしょう。そもそも、ファクタリングは本来入ってくる売上債権を割り引いて早期に現金化する手法です。
つまり、ファクタリングは未来の売り上げの先食い的な部分があります。資金スケジュールをうまく行わなければ、ファクタリングで食いつないでいくとしても先細って言ってしまうのです。
1-2売上債権先の企業の信用性

個人事業主がファクタリングを行う上でもう1つ難しい点があります。それは、売上債権先の企業の信頼です。ファクタリングでは、その売上債権の性格こそが重要になります。そのため、売上債権先の企業が経営的に安定した会社であるのかどうかは非常に重要なポイントなのです。
しかし、個人事業主はその契約スタイルや事業規模から、ファクタリングに十分な契約主と長期的な契約が結べる状況になっているのかといわれると難しいことが多いのではないでしょうか。
ファクタリングを行った後、仮に売上債権先の企業が倒産してしまった場合、ファクタリング会社は売上債権を回収すべがなくなってしまうため、未収金が発生してしまいます。
ファクタリング会社としてはこの状況を阻止すべく、売上債権先の信頼性を重視しているのです。売上債権先の信頼性とは、例えば売上債権先の売り上げ予測や財務状況、あるいは自社との関係性が挙げられます。
自社との関係性とは、ファクタリングに利用される契約が中長期的なやり取りで生まれたものなのか、それともスポットや季節変動などに影響されたものなのかという違いです。当然、今まで支払ってくれていたのだから今後も支払われるだろう、という信頼が得られる中長期的な売上債権のほうが、ファクタリングを利用する場合には非常に好まれることは間違いありません。
個人事業主だからこそのトラブル
以上2つの条件を満たすことが出来る売上債権が手元にあるのであれば、ファクタリングを利用して資金調達を行うことは可能です。
財務上、借入金が増えるわけでもないファクタリング取引は、小さな売上だからこそメリットとなる部分もある面白い手法でしょう。
ただし、個人事業主として資金調達に走るということは、かなり切羽詰まっている状況に追い込まれている場合が多いです。
この状況によって足元を見てくる悪質なファクタリング会社によるトラブルが増えています。ファクタリングに見せかけた闇金よりもひどい貸し付けや、保証人などのよくわからない仕組みを提案してくることがあります。
そこで、悪質なファクタリング会社が良く行ってくる手法についてみていきます。
悪質なファクタリング会社に注意
悪質なファクタリング会社が主に行ってくるものは大きく分けて3点です。
個人事業主だからと手数料を引き上げようとする
ファクタリング契約に必要ない保証人や担保などを要求してくる
ファクタリング契約とは関係ない契約を結ぼうとする
ファクタリングで重要視されるのは、売上債権先の信用であると先述しました。にもかかわらず、個人事業主であるからとの理由でインターネットサイトなどに掲載されている手数料よりも引き上げた手数料を取ってくる会社もあります。
中には、売上債権の50%もの手数料を取ろうとする悪質な業者もあるほどです。最初に提示された条件について、個人事業主であるという理由で条件が悪化した場合は、速やかにその契約を中断すべきでしょう。
また、ファクタリングは売上債権の取引であり、借金や融資などではありません。そのため、保証人や担保などの必要性は全くない契約になります。
しかし、個人事業主であるからとの理由で、保証人や担保などを求めてくる業者が後を絶ちません。こうした保証人などに名前を書いてしまうとは、ファクタリングなどの仕組みをよく知らない人ということで悪質な名簿に名前が書かれてしまい、さらに面倒なトラブルを引き起こす傾向にあります。
また、ファクタリング契約では、必要ない契約を結ぼうとするというトラブルも多く聞こえてきます。ファクタリング契約で必要なのは2つで、債権譲渡契約と債権譲渡登記代行契約です。
他に契約書が出てきた場合は必ずなぜ必要なのか聞いてみたほうが良いでしょう。だいたいが、ファクタリング契約とは関係ない説明がなされるはずです。
その場合は速やかに契約を中止し、何か気になる場合は自分が信頼している弁護士などに相談することをお勧めします。
また他にも、ファクタリングに対する無知にかこつけて、消費税を取ろうとしたり必要ない個人情報などを聞き出そうとしたりする場合もあります。
銀行融資を断られるなどしている場合、資金ショートなどで不安や焦りがある場合が多いとは思いますが、何かおかしいと感じたら速やかに契約を中断し、弁護士や税理士などの契約や財務に強い専門家に相談したほうが良いでしょう。
個人事業主でも、十分な売り上げのある売上債権とその売上債権先の企業がある程度の信用がある場合は、ファクタリングを利用できることがわかっていただけたかと思います。
しかし、個人事業主という弱さを悪用して、妙な契約を結ぼうとする悪質なファクタリング会社が後を絶ちません。
ファクタリングは利用価値のある手段です。悪質なファクタリング契約を見破りつつ、うまく利用していくことをお勧めします。